金属探知機と一概に言っても、いろいろな仕組みの機器があります。金属探知機を理解する、第一歩として、最もシンプルなBFO(Beat Frequency Oscillator)方式の金属探知機について調べてみました。
BFO方式金属探知機
BFO方式の金属探知機は、1960年から1970年代にかけて売られていた製品で主に使われていた方式だそうです。もちろん現在でもこの方式の金属探知機は売られていますが、プロ用ではなく、安いおもちゃ用途の製品に使われるだけになってしまっているようです。
そんな過去の仕組みと動作原理を今のこの時代に理解する必要はあるのか?と問われれば、その答えは「Yes」です。探知機が作る電磁場がターゲットにより乱され、その乱れを検知するという、金属探知機の大まかな原理は変っていないから(だそう)です。
BFO (Beat Frequency Oscillator) 金属探知機の特徴
文章でだらだらと書くと分かりにくいので、BFO金属探知機の特徴を箇条書きに書き出してみます。
- とても近い周波数を出力する2つの発振器から構成される
- 一つは、Search Oscillatorと呼ばれ、Search Coilとセットで発振を行うように調整される
- もう一つは、Reference Oscillatorと呼ばれ、発振周波数が変動しないように構成される
- 二つの発振出力は、mixer(混合器)に注入され、Beat(うなり)が取り出される
- beat(うなり)は、|f_{1}-f_{2}| 成分なので、不要な(f_{1}+f_{2}) 成分を後段で除去する
- mixerの後段には、beat成分を取り出す為にLPF(Low Pass Filter)が配置される
- beat成分は、可聴域となるように調整される
- f_{1}=100 \mathrm{KHz}, f_{2}=100.5\mathrm{KHz}に調整すれば、beatは、500Hzとなる
- 一般的に可聴域は、個人差はあるが20Hz から 15KHzである
文字だと分かりにくいです、ブロックダイアグラムを書いてみました。
BFO金属探知機の動作原理
Search発振器(Oscillator)は、L-C発振器で構成されています。Search Coilは、近くに金属があるとインダクタンスが変化し、Search Oscillatorの発振周波数が変化します。その結果、Reference Oscillatorとの発振周波数の差分に変化が生じ、その変化を取り出します。
では、なぜSearch Coilは、近くの金属に敏感に反応するのでしょう?それは、金属が電磁場に晒されると「渦電流(eddy current)」が発生し、晒されている電磁場を打ち消す方向に電磁場を発生させるような電流が流れようとします。この渦電流により発生した電磁場が、search coilのインダクタンスを乱すことになります。
実際に製作するにあたっての問題点
渦電流は金属が変動する電磁場に晒された場合に発生すると書きました。しかし、金属ではなくても導電体(電気を通す物質)全般で発生しうる現象です。つまり、金属だけでなく地中にある導電性ミネラルにも反応してしまうのです。これらの影響を排除するような仕組みを回路に組み込む事は可能なようですが、その土地によってミネラルの含有量は異なりますので、利用前の調整も大切なようです。
問題はまだまだあります。
コイルは、その作り方で挙動が変わってしまいます。。コイルは絶縁された銅線を巻いて作るのが一般的ですが、コイルが持つインダクタンスは、径、巻き数、銅線の太さによって異なってきます。目的のインダクタンスを持つコイルを作ったとしても、巻き方により内部的に仮想のコンデンサが作られOscillatorからの信号を入力した時、設計通りの挙動を示すとは限りません。
Seach coilは、地面と平行にそれもなるべく地表近くを水平に動かす必要がありますが、地面に湿った草があると、Search coilと草の水分の間に仮想コンデンサーが作られてしまい、これまた設計通りの性能が出なくなります。
というわけで、仕組みは理解できても、物を作るというのはなかなか大変そうです。
次は、BFOタイプの金属探知機を作ってみるか、次の新しいタイプの金属探知機の仕組みを調べるか・・・なやましいところです。