毎年開催されている、金山遺跡・砂金研究フォーラム。第8回目の今年は2月8日に開催されました。
妻が年末から寝込んでいて、今年は参加できないかもしれない。と思っていたのですが、日帰りで参加する事ができました。一年に一度、みなさまの研究成果を聞くのはとっても刺激になります。
開催から2ヶ月近く経ってしまいましたが、参加してのレポートとなります。
夜中に出発!
自宅から身延までは片道3時間と少しの道のりです。朝普通に起きれば十分間に合う距離なのではありますが、渋滞が嫌いなのと寝坊が怖いので少し早いのですが出発です。
-2度。寒いけど・・・よく考えると、去年の方が寒かった。今年は暖冬みたいです。心配していた雪もありませんし、順調に進み、境川PAで仮眠を取る事にしました。ここまで来てしまえば、湯之奥金山博物館まで渋滞の心配もなく1時間弱で到着できます。
冬の車中泊には、必須アイテム
ところで、冬の車中泊には必須アイテムがあるのをご存じですか?それは、湯たんぽです。
お店へ行くと、小さな物から大きな物まで様々な種類があります。
車中泊でおすすめは、小さめな物。
大きい方が長時間暖かさが保たれますが、車中泊では数時間暖かければ十分です。それに小さければお湯の補充も楽ちんです。コッヘルで一杯沸かせばOK!
大切なのは、プラスチック製であること。持ち運びが楽です。ゴム製は劣化しやすい気がします。
そんな「車中泊 with 湯たんぽ」にも弱点があります。快適すぎて寝坊しちゃうんです。
いつも通り寝坊
仮眠のつもりが、ぐっすりと寝てしまい起きると外は青空が広がっていました。時計を見ると・・・11:30。あぁぁ。館長のプレトークに間に合わない。
会場に到着
12:50頃現着。なんとか本会議には間に合いました。今年は冬タイヤをはいてきたのですが、途中雪もなく博物館へ到着することができました。
今年から、喫煙所が新設(隅に追いやられたとも言う)されて、喫煙者のみなさん、寒そうに吸われていました。改正健康増進法の施行が4月に迫り、仕方ないことなのではありますが・・・
受付へ行くと、フォーラムへの参加ではなく、砂金採り体験に来ている方々が結構いらっしゃいました。これはゆるキャン△効果なのでしょうか?
今年はゆるキャン△
昨年末に身延町のホームページで、ゆるキャン△柄の年賀状が~という告知を見てから、身延が舞台になっているマンガがあるのか。と気になり、大人買いしてみましたが、タイトル通りゆるーいなんともいえない雰囲気の漫画です。嫁さんはTVドラマも観ていたようで、マンガにもずいぶんとはまっておりました。
第8回金山遺跡・砂金研究フォーラム本会議スタート
さてさて、13:00からフォーラムがスタートです。資料を受け取り真ん中の見やすい席を確保できました(目が悪くて後ろだと見えないのです・・
離島の砂金を探して – 沖縄 久米島編 –
講演された方は、全国全ての都道府県での砂金採取を制覇済みだそうです。変わった場所での砂金採取事例という事で、沖縄県久米島で砂金採取を行った経験を講演して下さいました。
離島と聞くと小さな島のイメージがあります。しかし、北海道・本州・四国・九州以外の島を離島と定義されていて、大きさは関係ないそうです。そういえば、昔ダイビングに行った慶良間も宮古も離島で大きな島だったなぁ。宮古には温泉もあったし。
久米島は、沖縄県内5番目に大きな島で、沖縄県で唯一、金鉱山があった記録が残っている島だそうです。古い資料から、金山の位置を特定し、その下流で砂金採取を試みるという定番の手法で見事に砂金をゲットされていました。
現地へ行った人ならではの感想を発表されていて、所変われば・・と面白く聞かせていただきました。
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- 自然公園に指定されているので、地形を変えるような行為には特別な許可が必要
- でも、ちょっとパンニングする位なら・・・OK?
- 南国の島なので、川がジャングル状態
- パンニングすると皿にサンゴが乗ってくる
- 試掘の記録しか無いけれど、石垣島にも鉱脈があるらしい
- 次は石垣へ行ってみたいそうです
- 自然公園に指定されているので、地形を変えるような行為には特別な許可が必要
GoogleEarthの衛星写真とGoogleMapのStreetView、そして現地写真を織り交ぜての講演は、臨場感あふれるものでした。でも、ジャングルの中で砂金採りはちょっと・・・どちらかといえば、ダイビングをしたいかも。
みんな活用しているとは思いますが、砂金採りをする場所を選定するのに、Google Mapは有用なツールの一つだと改めて感じました。
砂金って何が含まれているの? – 身延町採取砂金の元素分析結果について –
お仕事で分析機器を販売されている方の講演。個人ではとても手が出ない高価な測定機器を使い、身延周辺で採取した砂金の定性/定量分析をした結果を発表して下さいました。
生憎、ぼくには縁の無い分野の話であまりよく分からなかったのですが、今は、卓上に乗るようなサイズの電子顕微鏡があるのですね。驚きました。が、電子顕微鏡なら試料に事前処理を施さなくていいのかな?と思っていたら、やはり、精密な分析を行うには樹脂に埋めたあと研磨し測定表面を平らにする必要があるとか。
今回は、あくまでデモ。大まかな結果とのことでした。
さて、注目の結果は、金の含有率70-80%、鉄が10%前後だったとのこと。砂金というのは自然と純度が高くなる物だと思っていたので、かなり意外に感じました。
が、身延は酸化鉄の層が多いし、きちんと前処理をしなかったために鉄の含有量が多めに出たのかもしれない。とおっしゃられていました。
このような高価な機器を触る機会は無さそうですが、もし自由に使えるチャンスがあれば、金鉱石中にある金と、その下流で取った砂金を比較し、本当に砂金は水により不純物が流れ出し純度が上がるのかどうか調べてみたい。
なお、利用した機器のお値段は数千万円だそうです。oh…
柴金遺構の探し方
柴金は堆積の仕方により以下の種類に分類されるそう。
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- 風化残留タイプ
- 河岸段丘タイプ
柴金を採掘するには、比重選鉱する為に水を人為的に流す必要があり、石垣が積まれたりと特徴的な地形が生まれる。また、採掘跡は、すり鉢状の地形になるのだけれど、写真には写りにくい。
ここまでは大体知っていた事でした。
その後に示された、「水路状構造が平行して何本も走っている写真」を見てとても驚きました。こんな地形見たことない。
以前、古い時代に鉱山があったと言われている場所を探しに行き、山の上に山金を掘ったと思われるほとんど埋まった鉱口を発見した後、鉱脈に沿い探索すると、すり鉢状の地形がいくつもある場所を見つけた事があります。
その時にこの知識があれば、その下流に柴金遺構を探したりともう少し楽しめたのになと残念に思いました。次、そこへ行く事があればもっと詳しく観察できそうです。
それにしても、窪地というのは本当に写真に写りにくいものですね。
金属探知機を調査した件
砂金採取に金属探知機を使うことはできるのか?砂金採取をはじめた頃にはよく考えた疑問です。金属ゴミを指標にして寄場探しには使えるかもしれないけれど、直接的に金属探知機を使って砂金を探す事はできない。とぼくの中では結論が出ていたつもりでした。
なので、今回の題目を見た時にも、同じ結論かしら?と思っていたのです。
一般的に金属探知機というと、昨年の講演にあった、オーストラリアでの砂金取りツアーの体験の話のように、大きなサーチコイルを持つ金属探知機を想像すると思います。が、今回試してみたというのは、ピンポインターと呼ばれる先っちょでごく狭い範囲を探るタイプの金属探知機でした。
ここまで会場には、「へーほーふーん」という雰囲気が漂っていました。が、次のナゲットが並んだスライドが表示された瞬間、会場の空気が一気に真剣な物に変わったような気がしました(笑)
質疑応答にうつると、n村先生から思っていてもなかなか聞けない質問が飛びました。
Q「金属探知機のおかげでこれらのナゲットを取れたのですか?それとも、機械がなくても結果的には取れたのですか?」
A「無くても取れたかもしれないけど、金属探知機を当てることで、その溝を掘るかどうかの判断の助けになります」
紹介されていたのは、下の機械でしょうか。探すと安価なものから高価な物までたくさん出てきて違いがよく分かりませんが、今回の使い方だと「防水機能」が重要だそうです。
軽量・安価な3次元レーザスキャナを用いた鉱山遺跡の測定
毎年発表されている先生ですが、そろそろ退官の時期が見え始めてきているそうで、今研究されている手法を一般にも広めたい。その為には、使っている機器を安価に提供できるようにならなければいけない。という方向にも尽力されているそうです。
先日、NHKスペシャルで放送されていた「巨大地下空間 龍の巣に挑む」という番組で、洞窟内に「3次元レーザースキャナ」を運び込み、洞窟内の可視化していました。
あまり興味が無さそうに一緒に番組を観ていた妻も、3Dレーザースキャナのデータを可視化した動画には目を奪われていました。百聞は一見にしかずですね。
個人で所有できて手軽に測量ができるようになれば、ドローンのように今まで思いもしなかったような事に応用されていくのでしょうか。
近世初期における採鉱技術の変化 -路頭堀りから坑道掘りへ-
久間先生との共同発表で、毎年発表されていた坑道形状の変遷を、採鉱技術の進歩を軸に、露頭堀りから坑道堀りへどのように変わっていったのかの研究成果を発表されました。
金山開発が、川での砂金採取から露頭、鉱脈の発見につながっていくというのは、多くの書籍で紹介されている説です。
露頭を掘り尽くした後は、坑道を掘り、採鉱するしかないのですが、それには様々な周辺技術(照明、通気、排水、支保)が発達しなくては成し得ないわけです。
その露頭掘りから坑道掘りへ移行する途中の「𨯁追」(ひつい?ひおい?なんて読むんだろう)という掘り方があって、その実例がとても特徴的でまるで切り通しのようだなぁと印象深かった。
砂金掘り師は持ち運びが楽な道具の夢を見るか?
そりゃー気になります。全ての状況に対応する為に道具を持って行くと、大変な量になる。と発表の冒頭で山ほど荷物を背負った砂金掘り師の後ろ姿写真が載せられていましたが、まさにその通りなのです。
目的地が決まっていれば、まだしも、新しい堀場を探索する場合は、どんな道具が必要になるのか予測できません。更に、足下の悪い中長距離の移動を強いられる訳です。当然、軽量コンパクトな道具が求められているわけです。
なかでも最も「かさばる」と思われるのは、スルースボックスです。スルースの有り無しで、土砂処理効率に雲泥の差が現れますから、できれば持って行きたい。しかし、重いし大きい。
そんな悩みを持つ砂金掘り師達に、軽量安価なソリューションの提案
– 100円ショップで買える材料と塩ビ管で作る「ネコ」の制作 –
課題というか改良の余地はまだまだあるそうですが、軽量コンパクト組み立てのしやすさという点ではピカイチです。使い勝手はどうなのですかね。
後で質問をしたところ、布が土砂の重みで弛んでしまいそこに小石などが溜まってしまうのが難点だそうです。ざるとの組み合わせで使い勝手向上なのかしら?
最後に気になる材料の総費用ですが、なんと700円程度だそうです。
砂金採取道具の自作 -手動ふるい器SC-1利用のトロンメル-
トロンメル(trommel screen ※リンクは英語版Wikipedia)という道具を初めて知りました。回転する筒状のザル!?というのが第一印象です。
言葉ではわかりにくいので、Wikipediaの画像を貼ってみました。
筒の中に、サイズ分別を行いたい物質を投入して使われます。筒状のザルの目は、入り口から出口へ向かうに従いだんだんと大きくなっているので、回転させて、中を物質が移動していくうちに、細かい物からふるい分けられていくという具合。
WikipediaのPageによれば、一般的には産業廃棄物処理場、鉱物処理に使われているそうです。
こんな道具を自作してしまう人が居るんですね。
円柱状のそれも回転可能なザルを作るのは大変だろうなぁと聞いていると、農業用に土を振り分けるための道具として、小型のトロンメルが販売されているそうで、それを利用して作ってみました。という発表でした。
実際のところ、これを作ってみよう!と思う人は居ない(失礼!)と思いますが、普通に生きていたら一生縁が無かった機械の事を知る事ができたりするのが、このフォーラムの面白いところです。
世界砂金採り選手大会 2019 – フィンランド
フィンランドで行われた、世界砂金採り選手大会(World Gold Panning Championship 2019)への参加体験の講演。
ぼくには、フィンランドと聞いて思い浮かぶのは、ムーミンとLinus Torvalds氏くらいでしたが、Laplandという世界的に有名な金鉱地があるのですね。
地図を見た感じでは、かなり僻地ですが・・・世界各地から参加者が居たそうで、世界は広いですね。
参加者の多くはキャンピングカー等で訪れ、会場付近のキャンプ場で寝泊まりをするそうです。欧米のバカンススタイルなのかな?のんびりと過ごせてうらやましい。
会場となったタンカヴァーラ(Tankavaara)には、金博物館があって、そこには日本のコーナーもあって揺り板、カッチャ、ネコ、着物などが展示されていたそうです。
で、大会ですが、ほとんどの選手が、フラットパンを使っている中、講演者は自作の「揺り板」で参戦。楽しんでいるのが話の端々から感じられました。
閉会式
最年少参加者さんから締めのお言葉。今年の8回目ということで、溜まったナレッジを有効活用しては?みたいな話があったような(すみません、記憶があいまいで)
確かに、今回の講演の中にも過去の講演内容にナレッジを積むような内容もありましたし、過去の講演内容をまとめてもらえると面白いなぁと思いつつも、資料をまとめるのはなかなかの重労働でしょうから、難しいかもなぁと思わなくもないです。
最後に
フォーラム開催にご尽力されている、発表者の皆様、応援団の皆様、博物館スタッフの皆様と館長、ありがとうございます。来年も楽しみにしています。