ガリンペイロ

あまり聞き慣れない「ガリンペイロ」とはアマゾン川奥地の非合法金鉱山で金を採掘する労働者のこと。非合法金山という単語からも想像できる通り、一攫千金を夢見る荒くれ者集団というイメージがありますね。

むかし、まだ幼かった頃に「UTAN」という雑誌でガリンペイロの記事を読んだような記憶があります(記憶違いかもしれませんが)。ちなみに、このUTANに多田銀山の埋蔵金を掘っている鈴木さんのインタビュー記事が載った事は、はっきりと覚えています。

このガリンペイロはゴルゴ13にも登場していて(ゴルゴに出てきたガリンペイロはダイヤを掘っている設定)、もちろん最後はゴルゴに退治されてしまいます。

ゴルゴ13のストーリーでは山賊のような無法者として描かれていますが、実際のところはどうなのか。

あいにく、僕は番組を見ていないのですけれど、2016年にNHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」というシリーズ番組が放送されました。そのシリーズ中の第2集が「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」という実際にガリンペイロの取材をした番組なのです。

この本はその取材を元に番組ディレクターの国分拓氏が書いた一冊です。砂金採りをする人には必読、とっても面白い本だと思います。というか、みなさん関連する文献には貪欲ですから既読かも知れませんが!

そこは誰でも受け入れる

過酷な労働と慢性的な人不足。ちゃんと働くのならば、過去を問わずに受け入れるのだとか。そんなに訳で大部分のガリンペイロ達は自分の過去はもちろん、本名すら明かさないのです。

記録が残っている中世日本の鉱山には郷の法とは別に「山法」という鉱山街独自の法があったそうです。それが微妙にガリンペイロの掟に似ていて面白いと思いました(日本の金山では誰でも受け入れていた訳ではないようですが)

取材を元にしたドキュメンタリーと銘打っていますが、ひと山当てる為に非合法鉱山へ向かう若者(ラップ小僧)を軸にストーリーは物語風に進んでいきます。

ところでNHKの取材は合計50日間に及んだそうで、ガリンペイロ達の労働環境と内容、日常生活、休日(週休1日)、年末年始のお祭り騒ぎと、日本とはまったく違う生活が余すことなく綴られています。

意外だったのは、ゴルゴで描かれているような無法者だらけというわけではなくガリンペイロの秩序があり、その秩序の元で生活をしていること。金掘る人だけではなく、道路整備、機械のメンテナンス、物資運搬、新しい鉱脈を探す人、それぞれが自分の仕事をして非合法金山が成り立っているというところ。

そして金の掘り方も書かれています。しかし写真が載っていないので正直なところよく分からない。高圧水流で土を削り、そのまま吸い上げ水路に流す。金を含んだ泥水を濾過器に流し込み、ある程度溜まったら集めて水銀で精錬するんだとか。さらっと水銀で精錬とか書かれていますが、いわゆるアマルガム法ですね。水銀中毒とか気にしないんだろうなぁ・・・

集める機器は、うーーん、スルースとトロンメルみたいなもの?でも石を砕くとも書いてあったし・・・イメージがわかない。映像を観たいです。

ガリンペイロはチームで働くんだとか。1チーム4-5人程度で1つの穴を掘る。ついてれば500g/月、ついてないと100g/月。100gだってすごいじゃん!って思うけど・・・

ボスが7割、労働者が3割

ここでいうボスとは非合法金山の持ち主(オーナー)のこと。ボスが金を掘る為の機械、燃料、食料、住処を提供しガリンペイロ達に金を掘らせる。その代わり100g取れたとしても労働者の取り分は30gとなる。手持ちが無い訳ありな人にとってはありがたい、最後の駆け込み寺的な場所なのだと思う。

「昔の日本の金鉱山」では、存在が秘密で立入禁止となっていた事もあり金山衆はもっと閉鎖的で、正しい符牒交換ができないと追い出されたり悪くするとそのまま消されてしまう事もあったんだとか。ここまで読むと、ガリンペイロたちが働く非合法鉱山は、労働こそ過酷だけれど人生のレールを踏み外した後の敗者復活戦的な役割を担っているのかな?なんて思ってしまいますね。

このような非合法組織に係わると抜けることができなくなるとはよく聞きますが、このNHKが取材に訪れた非合法鉱山では、抜けるのは自由なのだとか。実際、この本の主人公的な「ラップ小僧」は一度脱走し、その後でなんとまた出戻り就職する事を許されているのです。

NHKが取材に来ているから・・・という見方もありますが、本を読み始める前に想像していたよりもずっとしっかりと鉱山経営されているのだなぁと思いました。

「ガリンペイロ」という単語やアマゾン奥地で劣悪な環境で金の採掘をしている労働者がいるという話は知っていたのですが、実際に取材をしてのちゃんとした本は初めて読みました。まぁかなり物語風になっているので、取材内容をもとにして面白く肉付けしたドキュメンタリー風な一冊ということになるのかもしれません。

未視聴ですが、先に書いた NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」は、肉付けされていない生の映像が流れるのかなぁ、観てみたいです。

ガリンペイロが大暴れ

この本を読んで、ガリンペイロに対するイメージが少し良くなっていたところに、ネット上でこんなニュースが流れて、あぁやっぱり無法者集団なのだなぁとまたイメージが急降下しました。

アマゾンの熱帯雨林が金採掘を狙う武装集団に破壊され原住民も銃撃されている -GIGAZINE-

実際に記事に載っている辺りの衛星写真を調べてみると

Bingマップの方が鮮明でした(Webに埋め込めないのかなぁ)

この川沿いを見ていくと記事にあるように、いくつかの採掘跡と思われる地形が現れます。

本書「ガリンペイロ」に出てきた非合法鉱山も広大なアマゾン川奥地のどこかにあるんでしょうね。

 

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