昔から山へ行くのは好きでした。
高校時代は丹沢メインで、大学時代はワンゲルに所属していたので重い革靴をはいて、テント泊の重い荷物、当時すでに化石といっていいようなニッカボッカにカッターシャツ、そしてなんとキスリングを背負ってました(先月の山渓に昭和中期1960年代の装備と書かれてますが90年代の話です) 流石に冬に行くときはちゃんとした装備で行きましたけどネ。
その後は探検ぽい事がしたくて、ケービングを2年間位。ツナギを着てコウモリの糞にまみれたり、まだ測量されていない洞窟の奥を調査したりと楽しかったのですが、ケイブダイブをやりたくなりそうで怖くてやめました。
社会に出てからは山ではなく、海でダイビングにハマったのもつかの間、結婚してからはしばらくの間、自然から遠ざかっていました。気づけばアラフォー。肩もヒザも痛いし、会社で1フロア移動するのにエレベータを使うような生活をしています。
それが砂金採りを始めてからというもの、カッチャで砂利や石をどかし、中腰でお皿を回して、更には昔の金山跡を見てみたくてあまり人の入らない山へ登ったりとまた山へ戻ってきました。
入る人の少ない山で怖いのは、単独での遭難と猛獣、害虫との遭遇です。最近はとくに熊が怖いです。
熊が怖い
前置きが長くなってしまいました。歳を取るとダメですね。
日本は、本州、四国、九州(絶滅の可能性大)にツキノワグマ。北海道に、ヒグマが生息しています。津軽海峡が境界になっていてるわけですね。
ぼくが主にうろついている多摩川源流域にはもちろんツキノワグマが生息しています。人がたくさん入るメジャーな登山道は人がひっきりなしに通過していきますし、熊もわざわざ近寄っては来ないでしょう。それが金山の坑道跡などを探しに人気のないむかしの路盤などを歩いているといつバッタリ熊と出会うかわかりません。
下の写真、黒川金山跡へ行った時のものなのですが、よく見ると裂けたりひっかかれたような跡が見えると思います。熊は塗料の匂いが好きなのか嫌いなのかわかりませんが、寄ってきてかじったりするそうです。
一番大切なこと
熊と出会わないように行動することです。
ツキノワグマは人を捕食対象とは認識しておらず、また臆病な性格なので人間が近づいている事を知らせることで出会うことを避けられるそうです。また、熊は目があまり良くないそうなので音と匂いに敏感だそうです。
・ 熊の行動パターンを知る
早春、冬眠から覚めた熊は、ブナの新芽やタケノコなどを食べています。夏になると沢沿いへ降りて沢に生える草などを食べています。それから秋になるにつれて生活の場の高度を上げていくそうです。
なので、夏の沢では気をつけようということでしょうか。
・ 音を出す
今年の5月頃からのクマ出没騒ぎを見ていると本当に効果があるのかどうか疑問も湧いてきますが、熊鈴などをぶら下げながら歩くと良いと言われています。
ところで、砂金採りは荷物を降ろしてゴソゴソとやっているので、熊鈴をつけていても大して音がしないのですよね。困りました。一番いいのはラジオなどなのでしょうが、せっかくの自然の音に囲まれた中でラジオを鳴らしているのは興ざめな気がしないでもないです。が、熊にやられるよりはましですが。
バッタリ出会ってしまったら
熊に出会ってしまったらどうするのが一番いいのか?諸説あるのでしょうが、何冊か本を読んでみたところ、最も影響しているのは熊の機嫌です。気が立っている時は襲ってくる事が多いようなのですが、こればっかりは運なので・・・・
熊と至近距離にてバッタリと鉢合わせしてしまった時にとる対応として、現代に於いて最も良いとされているのは
「目を合わせたまま(視線を外してはいけない)ゆっくりと後ずさりして距離を取る」
「クマ撃退スプレーを至近距離から鼻面に向かい噴射」
どちらも難しそうですね。最もマズイ行動と言われているのは
「 後ろを向いてダッシュ」
です。犬に追われた事がある方ならわかると思いますが、ケモノは逃げるとしつこく追いかけてきます。犬は木に登ってしまえば逃げ切れますが、熊は木登りも得意なのです。
聞いた話なのですが
二人であまり人気のない山道を歩いていたら、先行していた同行者がクルッと回れ右をして走ってきたそうです。何事かと思ったら、熊が出たと。自分も一緒に走っていたら、後ろから熊が自分たちを追い越して先の藪へ入っていったそうです。
その熊は人間に全く興味が無かったのでしょう。運の良いお二人です。
同行者がこういう行動をとる事で自分にも危険が及ぶ事がありますから、一緒にいく人とは認識を合わせておく事が大切ですね。
死んだふりは?
では、昔から言われている死んだふりというのはどうなのでしょう?
ジョークなどで例に出される事が多い、死んだふりですが、「抵抗することも逃げることもできない」状況下においては有効なのだそうです。怪我をしてでも生還するという最後の手段というわけですね。
ただ死んだふりをするわけではなく、心得も書かれています
・伏せの状態で、手で草などにしがみつく、または、首を守るように両手を首の後に組む
・熊は近づいてきて、頭に爪をかけ起こそうとするから動かされないようにじっと我慢(ここで怪我をするよね)
・動かない事がわかると、熊は興味を失い離れていくけれど、ここで頭を上げてはダメ。動いたことが熊にバレるとまた戻ってくるそうです。
参考にした本
書名: 山でクマに会う方法
著者: 米田 一彦
出版社: 山と渓谷社
1996年10月10日 発行
199ページ
クマ研究者による、クマの生態の紹介。クマの事をよく知れば会うことも、避けることもできるのです。
文庫化されて、今は文庫本が入手可能です。
山でクマに会う方法 (ヤマケイ文庫)
書名: ツキノワグマ物語
著者: 高橋 喜平
出版社: 筑摩書房
1974年12月15日 発行
198ページ
こちらもフリーのクマ研究者の一冊。幼い頃クマを飼っていた話、マタギと熊狩りに同行した話、クマ愛にあふれる一冊。古い本なので、飼いクマを殺してクマ買いへ売った話など、時代の違いが興味深い。
ツキノワグマ物語 (ちくま少年図書館 25)