今年は関東で1962年以来54年ぶりの11月中の積雪が観測され、気温の低い日々が続いています。丹波山村もきっと寒いことでしょう。道路凍結が怖く出かけられないので積んである本を読む日々です・・・
多摩川を扱った書籍は数多くあれど、源流域に話題を絞った書籍はあまり無いのではないだろうか。本書は、多摩川源流域(奥多摩湖より上流)をテーマにした紀行文である。村の古老を訪ね聞いた話も十分興味深いが、間に挿入される土地の歴史に関する記述がこの著書を貴重なものとしている。1981年発行なので、今から35年前の書籍ということもあり、古くなってしまった内容も多いが、現在の姿と比較しつつ読む事もまたおもしろい。
書籍データ
書名: 多摩源流を行く
著者: 瓜生卓造
出版社: 東京書籍
昭和56年 9月 7日発行
目次
第一章: 母なる川
第二章: 丹波山村
第三章: 一之瀬高橋
第四章: 小菅村
第一章では、源流とされている「水干」から、下流へ向けて俯瞰し、奥多摩湖までたどり着く。龍喰、大常木なども紹介されている、陰鬱とした・・・という表現はどうかと思うが。
第二章では、逆に奥多摩湖から上流へ向かい丹波山村の集落を紹介しつつ歴史と人々の暮らしも紹介している。古い村なのに記録が少ないのは、何度も大火事に見舞われてお寺でさえも焼けてしまったコトがあるからだそう。
鴨沢、お祭、保之瀬、押垣外、奥秋、小袖。お松引、小正月、カドンドウシン(門の道祖神)、黒川金山衆の風習である檜の門松の話。伐採後の木材を山から降ろすのに用いられる修羅(シュラ)の説明は、この本を読んで初めて理解できた。
村役場から小菅村方面へ県道18号線を200mほど上がった山側にある、丹波山村の郷土民俗資料館では、カドンドウシンや修羅の模型、昔使われていたカズサ(カッチャのこと)などを見ることができる。(冬は閉館している)
第三章では、春駒以外ではあまり語られる事のない一之瀬高橋が紹介される。
が、その前に泉水谷と大黒茂谷に明治後期から昭和初期にかけてこの谷に暮らした人々の痕跡、そして戦後に行われた大伐採の歴史が語られる。
小常木の大伐採、犬尾切峠と犬切峠、市ノ瀬と一之瀬、金山探索の歴史、そして黒川金山、ほんとうの花魁淵など。「信玄の黄金遺跡と埋蔵金」にも登場している曽根良一さんがここでも案内人として登場している。
第四章は、小菅村。小菅では金山や砂金の話題は出てこないので割愛する。
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