大菩薩連嶺 岩科小一郞

うちの近所にある古本屋では、毎月1日~10日までの期間、割引セールを行っています。なので、月初めには何かないかな?とお店をのぞきに行くことにしています。BOOKOFFのような今風な古書店ではなく、昔からの古書店という店構えのお店で(実際、ぼくが小学生の頃からある!)店内には未整理の古本が積まれ古書特有の少しかび臭いような匂いが漂うお店です。

なのにというのも変ですが、この古本屋さんからは書籍愛が感じられないのです。不思議なのですが。BOOKOFFでさえ値札に剥がれやすく跡が残りにくい物を使っているのに、このお店は高価な本にもべったりとのり付けしてくれます(原全教氏の本にも糊の跡が・・・)。書籍は内容が大切なのは分かるのですが、高い本もあるのだし、もう少し考えて欲しいなぁというと思うこともあります。

さて、このゴールデンウィーク中ちょっと時間があったのでフラフラっと店舗をたずねてみると、GW 20% OFFセール開催中でした(ラッキー

全品20% OFFとの事なので、普段は見ないコーナーもじっくりと見てみると、趣味スポーツコーナー(ここには山岳関連書籍も置いてある)に、いかにも古そうな「大菩薩連嶺」という本が並んでいました。中を見ると年代的には原全教氏と同時代の方で、タイトル通り大菩薩を中心にした周辺地域について書かれています。もちろん、黒川金山から丹波山、小菅も範囲にはいっていたので購入してみました。

古い紀行物

あとがきによれば、昔の山男は自分の山を持っていて(好きな山域という意味ですね)、その山域をつぶさに歩きまわるという人が多かったそうで、それにならい著者は、大菩薩周辺を調べようと歩き回ったそうです。残念ながら調べた資料の大部分は戦災で失われてしまったが、残った資料、おぼろげな記憶を集めてまとめたのがこの書籍ということらしい。

秩父、大菩薩周辺のバイブル的存在である、原全教氏の秩父シリーズは、山について事細かな説明、解説をされているが、こちらの書籍は、地名、伝承など山域を歩き回るにつれ里にも興味の対象が広がり、結果として「山だけ」ではなく紀行文となっている。以前紹介した、多摩源流を行くと似たような印象を持たれるかもしれないが、書かれた時代が異なるので両方読むとより面白く読むことができるかもしれない。

伝承や伝説、人々の暮らしぶりを知りたかったら、泉昌彦氏の著書「信玄の黄金遺跡と埋蔵金」「伝説と怪談シリーズ」も合わせて読むとより楽しめると思います。

読みどころ

柳沢峠を通る青梅街道が書かれている図が掲載されているのですが、明治開通の今では跡を辿るのも苦労する道がしっかりと書かれています。

わかりますかね?藤尾橋の所で丹波川右岸から左岸に渡っているのが、明治の馬車道です。
黒川谷を渡る橋は、現在では橋げたが痕跡として残されています。下の写真は、4年ほど前(2013年)に黒川金山跡を見学しに行った時に撮った物です。橋が落ちて橋げたのみ残っているのが分かると思います。流れは、黒川谷です。

昭和43年(1959年)の地図では、柳沢峠を通る道がありますが、江戸時代の1842年の地図では、丹波山から柳沢峠を通らずに、大菩薩峠を越える、「丹波山大菩薩道」を見ることができます。これが本来の裏甲州街道というわけですね。

他、トピックをあげると

  • 一ノ瀬集落の人々は秩父俣ノ沢鉱山から移ってきた
    • これは多分、甲斐国志からの引用だと思う・・・
  • 一ノ瀬に前場金山、一ノ瀬金山があり、20個ほど坑道が残っていた
    (どこにあったんだろう?今はすべて埋まっているのかしら)
  • 真木温泉のある真木という地名は、牧場から付いた地名である
  • セーメーバン山で安倍晴明が岩殿山の鬼に化かされて憤死しした話
    泉 昌彦氏の本にも載っていたし、毛色の違うところでは、嘉門七海氏の本にも紹介されていた。このような言い伝えは、安倍晴明派と鬼(なんの象徴だろう?)の勢力争いがあり鬼が勝ったという事を伝えているという解釈はとても面白い。
  • 里の古老から収集した言い伝え
    • 天狗、妖怪、里の暮らし、etc,etc
  • 地名に関する考察、調査はとても詳しい

この地域に興味のある方、よくその付近を歩かれる方は、持っていると山行と山村歩きが楽しくなる一冊だと思います。

アマゾンだと少し高いですね・・・

書籍データ

書名: 大菩薩連嶺
著者: 岩科 小一郞
出版社: 朋文堂
昭和34年 5月30日発行

目次

序説
大菩薩峠
大菩薩考
黒川俚譚
小菅抄
小金沢の話
杣聞書
和田の相馬
鹿狩覚え書
黒岳と小金沢山
奈良子誌
滝子山閑話
岩殿噺
源次郎岳を語る
壬午の伝説
地図を広げて
山旅コース
あとがき

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