オオカミを放ったイエローストーンのその後

このblogで紹介した「オオカミを放つ」という本の中で、「絶滅してしまったオオカミを新たに放ち生態系を復旧させた」成功例として何度も引用されていたアメリカ「イエローストーン国立公園」での最新報告が、カラパイアで紹介されていました。

本家イエローストーン国立公園のレポートはこちら

日本の場合はどうか

一時期盛り上がっていた、日本へのオオカミ再導入計画は、すっかり耳にしなくなったように感じます。

現在、日本の山野では、以前のイエローストーンと同じようにオオカミが絶滅した事で鹿の個体数が増加し、林業や農作物への獣害が広がっている。身近な所では、鹿が運ぶと言われているヤマビルの生息域拡大に大きな影響を与えています。

ヤマビルといえば、ぼくの地元からも近い丹沢山地で登山客が下山後に駅へヤマビルを大量に持ち込んだというニュースが記憶に新しいですね。

小田急・秦野駅でヤマビル大量発生 登山客の「お持ち帰り」で繁殖?注意喚起ツイートに反響

これらの事を考えると、早急になんらかの対策が必要だと思われるが、先の「オオカミを放つ」でオオカミの再導入に問題は無いとする根拠が以下の通り。

ニホンオオカミは、固有種ではなく、ハイイロオオカミの亜種である。

しかし、2009年、2014年に「ニホンオオカミは固有種である」という論文が発表されています。オオカミ導入の根拠が崩れたことにより、日本へオオカミを導入しようと、主張しづらくなっているのかなと感じます。

個人的には

生物学や生態学などは学んだことがないので、低山登山愛好者としての意見ではありますが、率が低いとはいえ、人間を襲う可能性のある生物を野に放つ事には抵抗を覚えます(オオカミは、めったに人を襲わないと言われていますが、昔話では、オオカミは頻繁に人を襲っていますね…)

しかし、鹿の個体数増加が問題なのは確かな事。最近、ジビエブームで鹿肉等の販売が行われています。しかし、鹿肉などは処理に手間がかかる事もあり、流行っているとは言い難くその消費量だけでは、シカの個体数を減らすのには役立っていないのではないか。

あちらを立てればこちらが立たず

ところで、1980年発行の「丹沢・山暮らし」という本が手元にあります。

戦後まもなくの昭和22年に東丹沢の札掛近くに「丹沢ホーム」という共同生活の場を作り、そこで戦争孤児達を引き取り暮らした方の手記です。

冒頭 P.15 – 16ページにいくつかの生々しい事が書かれています。

    • 当時、進駐軍の軍人達が丹沢で鹿を撃ちまくり(スポーツハンティングとか言うらしいですね)絶滅寸前まで追い詰められたこと
    • 個体が増えるまで禁猟期間を設定したこと
    • その後、山梨県は猟を解禁したが、神奈川県は禁猟のまま国定公園に指定し鳥獣保護区となったこと

丹沢の鹿は鳥獣保護区となった事で、1970年まで全面狩猟禁止となり、一時は50頭まで減っていた生息数は、1000頭にまで増加した。それと共に丹沢に林業への被害、ブナその他への食害が問題視されるようになる。

このようにその時の状況で安易に決めると後々まで影響が及ぶという事がよくわかる例で、考えさせられます。

著者の中村芳男氏は、この後丹沢の自然保護活動を続けられ90年代までご存命だったそうです。中村氏はオオカミの再導入についてどのようなご意見をお持ちだったのだろうか。とても気になります。

とりあえず、なんの力もない登山者としては、山へ入る時は塩を持ち歩きヤマビルが居たら塩を振りかける。くらいしかできませんが・・・

 

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