[書籍] 地方病は死なず / 泉雅彦

これは過去の話です。しかし、それほど昔の話というわけではありません。山梨県での「地方病」(日本住血吸虫病)流行終息宣言は、平成8年(1998年)に出されました。今からほんの20年ほど前に本当にあった話なのです。

泉昌彦氏について

泉昌彦氏といえば知る人ぞ知る「赤本」の著者として山梨県周辺で埋蔵金探索や砂金採取に興味を持っている人には、とても有名だと思います。

上の赤本の他にも何冊か執筆されていて、見かけたらつど購入していました。
富士霊異記伝説と怪談

書籍のタイトルを見ただけで、郷土史に詳しそうだという事がわかると思います。しかし、その山梨県出身の泉氏ですら、この「地方病」(日本住血吸虫病)について自分の身に降りかかるまで過去のものであるという認識だったそうです。

冒頭から衝撃

泉氏は、この地方病の有病地になにも知らずに家を購入し、2年あまり住んでいたそうです。その結果、氏もこの地方病に罹患してしまいます。

既に二年余も住みながら、地方病の事に関しては、何一つ口を閉ざして語ったくれなかった有病地の農民たちも、いよいよ私たちが荷物を片付けはじめると、一度に堰を切ったようにしゃべり出した。私が地方病受難者の仲間入りをしたからだ。

(4ページから引用)

この後にも当事者ならではの生々しい文章が続きます。そのまま恨み節が続くのかと思いきや、それらは序章で終わり、その後の章は泉氏の真骨頂である、地元民からの聞き込みと資料を基にした事実が整然と続きます。

当事者ならではの言葉

地方病(日本住血吸虫病)については、wikipediaにとても詳しい解説が書かれています。詳しすぎて読みにくい向きもあると思うので、読みやすいshumipedia.comの記事も紹介しておきます。

上に挙げたページは、記録として残された資料を基にして書かれています。泉氏のこの書籍の違う所は、もっと当事者に近い視点から書かれているというところ。

先の泉氏が購入した新興住宅地の地主の話や、地方病患者に効果があるか定かではない注射を打ち、倉を建てた医者がいる一方で、患者の治療に尽力した医者もいたなどと、あまり表の記録には載らないような生々しい記録が淡々と書かれているのもこの書籍が他の資料と一線を画すところだと思います。

ずっと読んでみたかった

この書籍の存在を大分前から知っていたのですが、古書店やヤフーオークションやネットの古書店在庫データベースにもまったく引っかからず、購入は諦めて国会図書館へ行くしか無いかな?と考えていました。

そんな時に神奈川県立図書館の蔵書リストに入っている事に気づき、近所の市立図書館で手続きをして貸し出してもらうことができました。

上でも書いたようにwikipedia等であらましは読んでいて、恐ろしさを感じはするけれどどこか別な地方の話という印象を持っていました。が、しかし、この本を読んでみると、釜無川、笛吹川、富士川・・・なんだか砂金クラスタでよく耳にする河川名が並んでいるのです。さらには、中富町(当時)でも発生した事があるとの記録にぼくはニアミスしていたのだなぁと。

砂金取りではありませんでしたが、自動車の免許を取得し最初に出かけた場所が、笛吹川だったというのもドキっとさせられました。ぼくが自動車免許を取得したのは、1994年ですから終息宣言前になるわけなのですね。

大学生時代は親の車を乗り回して、山梨へは時々遊びに行っていました。観光地である昇仙峡へも終息宣言前に行っていたことを考えると、本当にニアミスしていたのだと読みながら恐ろしく感じました。

しかし、最もぼくを戦慄させたのは、医療従事者として働いている友人から聞いた話です。山梨の地方病の話題を振ったときに「15年位前かな?患者の肝臓に卵がびっしりと産み付けられてるのを見たことがあるよ」とこともなげに話してくれたのです。15年前というと撲滅宣言後…ということ?

もちろん、それから15年経っていますから今では撲滅されていると信じています。が、川へ入るときは気をつけようと改めて思いました。

最後に、泉氏からの警告文を引用して終わりにします。

手を抜けば100%に復活するミヤイリガイの生態上、ゼロか100%かの二者択一を選ぶしかないのである。

書籍データ

書名: 地方病は死なず
著者: 泉昌彦
出版社: 新泉社
1979年 12月 31日発行
220ページ

目次

序章 : 蔓延地の家を捨てて
第一章: 日本住血吸虫病とは
第二章: 山梨県の地方病の現状
第三章: 地方病解明への道
第四章: ミヤイリガイ撲滅対策史
第五章: 今も苦しんでいる後遺症者
第六章: 他県の地方病対策
第七章: 地方病の史的考察

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