東京都水道局 水道水源林巡視道地図

奥多摩、奥秩父方面の多摩川流域の山地を歩いたことがある人は、「水源巡視道」という言葉を耳にしたことがあると思います。奥多摩はあまりよく知りませんが、奥秩父(山梨側)には、主要登山道の他、地図に載っていない道が多数張り巡らされています。

2019年落合口から黒川鶏冠山へ登った時に、途中の分岐で地図には載っていない「水源巡視道」と書かれた標識があり、その先はどこへ通じているのだろうか?と興味を持ち、今まで曖昧な知識しか持っていなかった「水源巡視道」について調べてみました。

※ ちょうど隠れて見えない側に、水源巡視道と書いてあります

東京都水道局 水道水源林とは

多摩川は昔から東京都の重要な水源の一つになっていています。その多摩川からの安定した流量確保の為、明治34年から水源地の山林の管理が始めたという歴史があります。明治34年は、1901年ですから今年で119年目ということですね。
[参考資料]: 東京都水道局 水道水源林の歴史

しかし、その後も多摩川源流域で大規模に行われた伐採が原因で大規模な土砂の流出、水量減少が発生しており東京の水道では水質混濁が発生していたそうです。当時の東京市市長であった尾崎行雄は、水源域の視察を行い、その結果として積極的に水源林を買収し東京で管理する決定を行いました。
[参考資料]: 泉 桂子. 東京都水道水源林の形成過程 : 明治期に現れたいくつかの経営計画を中心として. 東京大学農学部演習林報告, 99, 133-184 (1998)

国道411号線の三重河原近くに明治43年の尾崎行雄市長による水源踏査を記念した碑が建てられています。

確かに山奥だけれど、なぜ調査しただけで碑が立つの!?と思われる方もいらっしゃると思います。明治43年のこの地域一帯は、秘境中の秘境でした。かろうじて明治11年に完成した「青梅街道(黒川通り)」が通っていましたが、東京の政治家には辛い道のりだったのではないでしょうか?(馬車も通ったそうですが、道幅が狭く、僕なら絶対に乗りたくはありません)

この記念碑前には5台ほどの駐車スペースが作られているのですが、何度か人のウンに遭遇してゲンナリです。キジ場ですかね?生理現象は仕方ありませんが、しっかりと処理して欲しいものです。

水源巡視道とは

広大な水道水源林を巡視する為に作られている道で、奥多摩町、小菅村、丹波山村、甲州市にまたがり、その総延長は785,121m = 785Kmにもなるそうです。
[参考資料] : 第11次水道水源林管理計画 P.69 表9 歩道現状表

僕の趣味の中には、砂金採取、多摩川源流部付近の金山跡を訪ねる、人気の少ない所での昼寝、水遊びなどがありまして、登山道から外れて山道を歩く事がたまにあります。

「ここは水源巡視道です」と書かれている道はあまり知らないのですが、ヤブや登山道の通っていない尾根を歩くと、所々にはっきりとそれと分かる踏み跡が現れるのです。

大常木林道

一例をあげると三ノ瀬から将監小屋へ向かう途中にある、「ムジナの巣」付近から標高1560mの等高線に沿って竜喰谷、大常木谷をまたいで伸びる道があります。この道は大常木林道と呼ばれていて、昔の仕事道です。先の方には古い「わさび田の跡地」や苔むした橋があったりと歩いていて気持ちの良い美しい道です。

竜喰、大常木の沢登り後、下山道として歩く方も多いようです。

このように水源巡視道は、古い仕事道を再利用しているものも少なくないのだとか。歴史的な生活道にはとっても興味がありますので、水源巡視道の一覧を見てみたい!そう考えるのは自然の流れではないでしょうか。

巡視道地図は公開されているのか?

ネットを検索していくと、東京都水道局はわりとオープンにデータを公表しています。冒頭で書いた「巡視道の総延長距離」や「水道水源林の歴史」など情報もまとまってます。これは、期待できるかも?とサイト内をウロウロしてみても、地図はみつからず。

Googleで検索をかけても、水源巡視道に言及しているページは多いものの、道を網羅しているページは皆無です。これは非公開っぽいなぁと思いつつ、ダメ元で、水道局に問い合わせてみました。

コロナ禍の為、返信が遅れると注意書きがありましたが、2営業日ほどで返信がありました。その内容をまとめると

    • 水源林の現状把握のために、職員及び関係者が歩く事を想定しているので
      関係者以外には非公開
    • 通常の登山道と比べ、道幅が狭く、踏み跡も不明瞭な危険箇所が多いので
      立ち入らないでほしい (Oh…
    • 販売されている登山地図を活用して安全に登山を楽しんで下さいませ

だそうです。予想通りの回答でした。

確かに登山道で「道標が壊れていた、目印が無い、倒木が道を塞いでいる」等の苦情が市町村に届くという話を耳にすると、水源巡視道を歩かせる訳にはいきませんね。事故でも起こされたら大変です。こんな急な斜面に道が付いている所もありますし、巡視道は歩くな。との回答に納得せざるを得ません。

なお、昭文社や吉備人出版から、登山地図が発売されております。このような市販の地図を御活用いただき、
楽しく安全な登山をお楽しみいただくとともに、地図上に存在しない歩道への立ち入りは御遠慮いただきたく存じます。

吉備人出版をお勧めしてくださるところに、優しさを感じました。

昔、好きだった東西丹沢の詳細図は持っているのですが、最近興味の対象となっている奥秩父の詳細図は発売されていないんですよね。残念。

まとめ

予想通り水源巡視道の地図を入手する事はできませんでした。しかし、地図はなくとも道はそこにあります。どこへ通じているのか予測しての山歩きも楽しいのではないかな?と思います。

丹波山村周辺は、歩いていてほんとに面白いです。数年前に地図には載っていない吊橋を数年前に見つけました。

崩落するのも時間の問題な感じの雰囲気でしたが、微かに人が歩いた跡がありました。これも水源巡視道なのかも!?なんて想像すると楽しくなりますね。

安全に注意してこれからも丹波山村周辺の自然を満喫できたらいいなと思います。

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