CFD – 数値流体シミュレーションで遊ぶ

昨年の掘り納めが不発に終わり引きこもりの季節がやってきました。この季節は家の中で本を読んだり、PCでしょーもないツールを書いたりして遊んでいます。

最近はあまり砂金が採れなくて、出かけるのも億劫なんです。

数値流体シミュレーション

ネットをフラフラとしていたら、CFDという単語が目に入りました。CFDとは、数値流体シミュレーション(CFD: Computational Fluid Dynamics)の事。ぼくの中では、高価な計算機資源を使い頭の良い人々が研究している、素人が手を出してはならない分野という印象でした。

それが、近年のPC性能上昇のおかげで、簡単なシミュレーションならば個人所有のPCでも動かす事ができるようなのです。学生時代にセル・オートマトンでお湯が沸く様子の粗いシミュレーションを暇つぶしに書いたような気がしますが、その頃とは比べ物にならないほどの計算能力が家庭用PCに備わっています。

しかし、ここでいう流体シミュレーションはそんなに簡単なルールじゃありませんし、自分でコードを書いてそれを可視化しなくちゃいけないんでしょう?この歳でまた流体力学の本を勉強するとか、結構シンドイのですが・・・と思っていると、コードを書かずに使えるツールがいくつか公開されているとのこと。

たぶん用語とパラメータの意味がわからずに撃退されるのがオチな気もしましたが、とりあえず情報を集めてみることにしました。

河川に特化した解析ツール

CFDの文字を見た瞬間に考えたのは「川の砂礫の流れをシミュレートして寄せ場を調べたい」と。趣味は砂金掘りですから当然ですね 🙂

軽く利用例だとか必要なデータだとか調べているうちに、水工水理学、土砂災害の研究者がつくる団体が河川に特化した数値シミュレーションツールを公開してくれている事を知りました。

iRIC – International River Interface Cooperative

これをちゃんと使いこなせれば、寄せ場を推測するのに利用できるのかもしれない!

ソルバー

CFDで解析を行う場合、自然界のすべての要素を盛り込んだシミュレーションは到底無理なので、解析したい問題に対し特化した計算モジュールを適切に選択する必要があります。この解析モジュールはソルバーと呼ばれます。

iRICにもたくさんのソルバーが用意されています。一覧はこちら

砂金のたまり具合を調べるには、どのソルバーを選択すれば良いのか。まずそこで躓いてしまいます。ソルバーの説明を読んでも専門用語が難しいのですよね。

とりあえず、Nays2DHソルバーを選択してみました。

Nays2DHは,河川における流れ,河床変動,河岸侵食の計算を行うために開発された,一般曲線座標で境界適合座標を用いた非定常平面2次元流れと河床変動計算の解析用ソルバーです。

河床変動というのは、砂礫が流され砂州が形成されたり、はたまた河床が削られたりすること。なんとなく、パラメータを適切に選ぶことにより砂礫を砂金と見立てての計算ができるような気がしますよね?

参考: 愛媛大学水工学研究室 : 講義資料

最もシンプルな問題の計算を実行してみる

Nays2DHは高性能でパラメータの意味を把握するのは大変そうなので、まずは以下の条件にて簡単な計算をして動きを試してみます。

  • 直線水路
  • 定常流
  • 障害物2個(大岩が直列に並んでいると仮定)

期待する結果動きは、障害物の下流側、2つの障害物の間に砂礫が溜まる事。

格子を作ってから適当に障害物を置いて

レッツ計算!

水流は、左から右へ流れています。

下流側にある大きな障害物の後ろでは、乱流が発生して下流側から障害物へ向かう流れが形成されています。そして、2つの障害物の間には、循環流のような渦が作られているのが見えてきます。

適当にパラメータを設定しましたが、なんとなくソレっぽい結果が出てきてました。

iRICは、particle(粒子)を上流から流す事で、流れの速度(velocity)をわかりやすく可視化する機能がついています。砂金の寄場を探すテクニックの一つである、バルーン作戦みたいなイメージでしょうか?

2つの障害物の間で渦ができたり、粒子が溜まる様子がわかると思います。
※ ピンク色の点が上流から供給した粒子です

つぎのステップ

iRICの説明書を読むと、本来ならば川の詳細な測量データを元にして計算を進めていくそうです。川の詳細な測量データ(河床の形状、深さや標高,etc)が所定のフォーマットで記述された「河川測量データ」というものがあるようです。

しかし、データは公開されていないようで、残念ながらぼくが興味を持っている多摩川上流域の流れを簡単に再現する事は難しそう。

国土地理院地図から川の曲がりを再現し、河川測量データフォーマットでデータを作ってあげればあるいは・・・フォーマットはここ(国土交通省)

最初に感じた通り、専門用語とデータ不足で撃退されてしまいました。

ソルバーには詳細なマニュアルの他に、チュートリアルやサンプルデータが付属しています。また、オフィシャルサイトではワークショップの講義資料も公開されています。

QGISのような解説本はありませんが、公開されているマニュアルと資料に一通り目を通すところから始めてみようと思います。

 

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