[書籍] サカナとヤクザ

去年どこかで書評をみかけて、年末年始に読もうと思い購入していた一冊。著者の鈴木智彦氏は、福島の原発事故後に原発作業の実態を知るために福島第一原発へ作業員として潜入して話題になった方。

今回は、日本での密漁の実態を取材する為に、築地市場(移転前)で働いたりと体を張った取材をしている。

密漁と一口で言っても・・・

全体で6章に分かれていて、それぞれの章で異なる密漁の実態を取材している。

  • アワビ
  • マグロ
  • ナマコ
  • ウニ
  • カニ
  • シラスウナギ

密漁と一言で言ってもその地域、国内で完結する物もあれば、外国を巻き込んだ大規模な密漁もあるのだ。

国際的な密漁というと一般人にはあまり関わりの無い世界のような印象を受けるが、国内市場で一般消費者の口に入る事を考えると全くの無関係とはいえず、知らぬうちに繋がっている事に驚かされる。

特にアワビは、消費者の口に入る約半分(つまり市場に出回る50%)が密漁によるアワビであるというデータもあるというのだから驚かされる。

良いのか悪いのか

密漁はもちろん悪い事だろう。密漁を専門に行う、密漁団と呼ばれる集団がいる一方で、地元の漁師すべてが被害を被っているというわけではないと著者はいう。生活のためという言い訳の元に、無尽蔵に資源を捕るという事が昔から行われてきて、それがいまの法律、条例に沿っていないと言うことなのだそうだ。

そのような後ろ暗い所には、ヤクザが目をつけ、集金システムを構築するのだそう。著者はヤクザ組織にパイプを持っているだけの事があり、ヤクザ組織に対して寛容な思いを持っている事が見え隠れしている。

まとまらないけど

ぼくの知らない世界の話で興味深く読んだ。読み終わった後に感想として残ったのは、このような世界と(直接)関わらずに生活出来ている事に対する感謝である。

人間は、皆生きていくのに裏の面は多少は持っているだろう。しかし、このように生活に直結する部分で後ろ暗い事を抱え込み生きていくのはものすごいストレスだろう。家族に自分の仕事を話すことができないというのは想像もつかないくらいの孤独感を感じるのではないだろうか。

書籍データ

書名: サカナとヤクザ
著者: 鈴木智彦
出版社: 小学館
2018年 10月 16日発行
319ページ

目次

第一章: 岩手・宮城 三陸アワビ密漁団 vs 海保の頂上作戦
第二章: 東京 築地市場に潜入労働4ヶ月
第三章: 北海道 “黒いダイヤ”ナマコ密漁バブル
第四章: 千葉 暴力の港 調子の支配者、高寅
第五章: 再び北海道 東西冷戦に翻弄されたカニの戦後史
第六章: 九州・台湾・香港 追跡!ウナギ国際密輸シンジケート

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